ひもそ日記

高1長女(ADHD)と中2次男(てんかん)の日常。たまに高2長男の男子校生活や家族のことなど。

わたしのこと その5

私が小さい頃、『パーマンセット』というものが大流行りしていました。
藤子不二雄さんの名作の一つである、「パーマン」になれるという、
その当時憧れの、コスプレセットです。
大きな目玉が描かれたイケてる青いヘルメット。
防水加工付きの、マント。
Pの字がキュートなバッジ。
以上が、パーマンセットの中身だったと思います。


小さいころ、わたしは団地に住んでいました。
なので、パーマンになりきった子供たちがワイワイ遊んでいました。
隣に住む年子の兄弟は、パーマンセットはもちろん、別売りの
トランシーバーまで持っていまいた。
……。
いいなぁ。
本物のパーマンみたいだなぁと、羨ましくなりました。


みんなも持っているし、わたしも欲しいと母に言いました。
「もう少ししたら、安くなるから待ちな。」と言われました。
辛抱強く待っていましたが、買ってくれる気配はありません。


暫くすると、だんだん、子供同士の中では持っているのが当たり前、
なんで持っていないの?という雰囲気になってきました。


そろそろ限界かぁと観念した母が、重い腰を上げて
「パーマンセット」を買って来てくれました。
当時、父が入院したり色々と出費が重なり、パーマンセットを
買う余裕はなかったと、後に母は言っていました。。


そんな家計の状況を、子供のわたしは知りません。
嬉しくて嬉しくて、早速パーマンセットを装着し、意気揚々と外に出ました。
「パーマンごっこやる奴、集まれ~!!」のどっかの子供の掛け声に、
参加できる事が嬉しくて、ワクワクしていました。


そんな中一人の男の子が、わたしを見た瞬間、お前はニセパーマンだと
言い出しました。
確かにニセモノでした(笑)
わたしのパーマンセットは、明らかにパチモンでした。
みんなの様にヘルメットではありません。
キャップ帽に、可愛くない目玉のワッペンが雑にくっついていました。
マントはへにゃっとなってて、空は飛べそうにありません。
防水加工なんてモチロン付いていないので、わたしだけ確実に濡れます。
トレードマークのPのバッチも、クルンと丸まっていて、
残念感に拍車をかけていました。。
……。
ヘルメットじゃないからおかしいなぁと思っていたけど、
やっぱりニセモノだったのか。。
でも、パーマンっぽいから別にいいんじゃないかな。
わたしそんなに気になんないけど。。


そんな気持ちを汲み取ってくれた、隣に住む子が言いました。
「良かったね。
 買って貰ったんだ!
 これで今日からパーマンごっこ出来るね。」


隣に住む男の子のナイスフォローのお陰で、
見事にパーマンデビューを果たすことが出来ました。


大流行りだったパーマンセット。
これがのちに、大変な事態を招きます。


そのお話は次回にでも。。

長女のこと その21

桃の節句、ひな祭り。
ひな人形を飾って、お祝いをする。
毎年楽しみな行事のひとつです。


日本人形が苦手なムスメには、小さくて丸々太ったコケシみたいなひな人形を。
お内裏様と、お雛様のみなので、出し入れも物凄く楽です。


ひな人形をしまうのが遅くなると、婚期が遅くなると、母に小さい頃言われました。
いやいや、それはどうやら迷信らしいよ!という話や、
「ひな人形をちゃんと片付けられない様では、嫁さんになれないよ!」
と戒めを込めた教訓らしいよ!という話も他の方から聞いたことがあります。


どれが本当か分からないけれど、どうやら早くしまった方が良さそう。
善は急げで、早速しまおうとしました。
それを見ていたムスメが言いました。


「母ちゃん。
 急いでしまったところで、わたしは早々お嫁にいかないよ。
 声優さんは、花が咲くまで実家暮らしの人が多いんだってさ。
 だからわたしも、基本ずっとこの家に居るって思っていた方がいいよ。」
……。
なんて恐ろしい宣言をムスメはしているんだろう。
それじゃぁ、早くしまう意味がないじゃないか。。
アンタの為に飾ったお雛さま達をみてごらんよ。
二人揃って幸せそうじゃないか。
こんな風に、母ちゃんは幸せになって欲しいと思っているんだよ。
アンタにはそんな母心がわからないのかね?
この愚か者めが!


「いや、違うね!
 母ちゃんは、のんびり父ちゃんと暮らしたいだけだね。
 それで、ついでに犬飼おうとしているんでしょ?
 わたしがアレルギーで飼えないから、嫁にいきなってことでしょう。
 こう言っちゃぁ、なんだけど。とんだ母ゴコロだよ!」
……。
うっ。。
当たらずとも遠からずだ。
ムスメ、最近冴えてきたな。。
でもさ、良いお相手を見つけて幸せになって欲しいとは思っているんだよ。
これは、本当にね。


それを聞いたムスメの言葉。
「じゃぁ、一緒に暮らすのは、弟でいいよ。
 あいつと二階で暮らすから。
 お雛様たちみたいに仲良く暮らすから。
 それで文句ないでしょ?」


おい。
それじゃぁ、今と変わらないじゃないか。。
どうやらわたしの野望が叶うのは、まだまだ遠い未来の様です。。

キムコ先輩のはなし その6

キムコ先輩の息子くん、高校生の頃は違う苗字だったはずなのに、
高校卒業と同時位に、またわたしの嫁ぎ先と同じ苗字になりました。
つまり、キムコ先輩は離婚されました。


そうかぁ。
バツが2こ付いちゃいましたか。。
でもまぁ、ギスギスしちゃってる感じで一緒に居ても辛抱たまらんし、
息子くんが、その空気感の中に居るのも可哀そうだから、良かったんじゃないかなぁ。
でも2年かぁ。
やはりお別れが素早いなぁ。


それから暫く経った頃、実家で義兄からキムコ先輩の近況を聞くことになりました。
宅配業者の仕事をしている兄が荷物を届けた時のお話です。
お届け先が、たまたまキムコ先輩が住んでいるアパートだったそうです。
まさかの再会。数年振りに会ったキムコ先輩。
車いすに乗っていたそうです。
ポテトチップスばかり食べていたら、糖尿病になってしまったとキムコ先輩。
身体障害者手帳も持っているそうです。


そして驚くことに、キムコ先輩は赤ちゃんを抱っこしていました。
生まれて間もない、女のコの赤ちゃんだったそう。


「籍は入れてないんだ。
 正直、父親だれか分かんないから。」
キムコ先輩のコトバに、さすがの兄も固まったと話していました。


一緒に暮らしていた息子くんは、仕事から帰った途端に
キムコさんに「妹の面倒をみろ!」と押し付けられるから、
もう無理!と出ていってしまい、一人暮らしを始めたそう。


今はキムコ先輩のお兄さんの息子さんが、女のコの面倒を見に、
足しげく通ってきてくれているそう。


「でもさぁ、キムコさんさ。
 トイレに行ってくるから、兄ちゃんこの子持ってて!ッて言ってさ。
 子供預けて、スタスタ歩いてトイレ行ってたんだよ。
 車いすいるか?本当にキムコさんに手帳が必要か?って思ったよ。」
……。
なんて言ったら良いのか分からない。。
家族中が同じ気持ちだったらしく、みんな黙っていました。


そして兄が話を続けました。
「キムコさん家の表札をみて驚いたんだよ。
 俺らと同じ苗字の表札だったんだよ。
 甥っこは、弟と血が繋がっているから、苗字を俺らの姓に直しても良いんだけどさ。
 なんでキムコさんまで、一緒なんだって感じだろ?
 しかも、甥っ子はもう家を出てるのにさ。。」
……。
「思わず、甥っ子もう家出て居ないんだから、
 表札直したら?って言ったんだよ。
 そしたら、なんて言ったと思う?」
……。
なんて言ったの、、?


「また、兄ちゃんの弟くんと再婚するかもしれないし、
 このままにしておくよ。
 だって。。」


そのコトバで。
背筋が凍った人。
図々しい!と呆れた人。
ふざけるな!と怒りを露わにした人。
バラバラな感情が渦巻いていました。


わたしは、怒りとか呆れとかよりも、なんだか胸がキュッと痛くなりました。
きっと息子くんが、弟くんと同じ苗字に戻したことに、寂しさや羨ましさや、
仲間に入りたいって気持ちが、キムコさんの中にあったんじゃないかな。
何かが少しづつ違っていたら、キムコさんと、嫁シスターズだったかもしれない。
そう思うと、なんだか妙に切ない気持ちになりました。


その後、キムコさんがどんな風に暮らしているのか分かりません。
また風の便りで聞くことがあるかもしれません。


そしたらきっとキムコ先輩のことだから、またわたしをアッと驚かせてくれると
思います。
驚かせてくれる内容が、キムコさんや周りの人にとって幸せなコトだといいな。。
そんなキムコ先輩は、わたしが今まであった人の中で、間違いなく


       最強の人です。


キムコ先輩の話、
       これにておしまい。